JASRACに関して海保けんたろう氏が興味深い記事を書いているので少しだけ反応してみたい。

海保氏がこの記事で言っているのは、
2. 著作権者がJASRACに委託せざるを得ない事情は、事実上JASRAC一択になってしまっているから。
3. JASRAC批判ではなく、JASRAC以外の管理団体を盛り上げていこう。
twitterでも記事の紹介をされています。
twitterでは、1項の「許してあげてね」 というところだけ書いていたから一瞬「ムッ」となって反応してしまったのだけど、記事を読んていたらその部分は単なる起承転結の起の部分であって本当に言いたいことは3項の「JASRAC以外の管理団体を盛り上げていこう」ということだったのがわかったのでとりあえずほっとしました。
でもよくよく考えてみると、
と思うわけですよ。
JASRACに関する批判は色々ありますが、私自身が一番問題だと思っているのは、
「著作権料配分の透明性と公平性に問題あり」
ということなんです。
マスメディア等に頻繁に取り上げられる著作権強者には分厚く、ほとんど実績のない著作権弱者には「真の実績」に関係なくほとんど配分されないという話がネット上を飛び交っています。
良く聞くのは、自分の曲をライブで演奏してしっかりと著作権料を支払ったのに配分がなかった というもの。
これはJASRACが採用する分配方法に起因するものです。JASRACはライブハウス等での楽曲利用は「統計学に基づいたサンプリング調査」によるものなので実際に演奏されたかどうかについて正確には反映されません。契約店舗からの直接報告も加味されると書いてありますが、いまもってサンプリング手法が採用されているところから契約店舗からの直接報告で全てを網羅しているとは思えません。
>>>>>>> 2020/3/26追記 :JASRACさんがついにこのサンプリング方式を改めて、セットリストによる明細ベースの把握に切り替えるというニュースが流れてきました!! <<<<<<<
このことはJASRACのWebsiteにも概要が書かれています。
著作権者が委託契約するときにはちゃんと説明を受けていると思うので、JASRACと契約している人がこれに対して文句を言う筋合いもないわけです。
JASRACから見ると、気に入らなかったら契約しなきゃいいじゃん!!
でも、選択肢が他にないからみなさんお怒りなんですよね。
ということで、海保氏の記事の結論である「JASRAC以外の管理団体を盛り上げていこう」ということになるわけですね。
めでたし、めでたし。。。。あれ?
話を元に戻すと、
組織の中の人が真面目に一所懸命に仕事していたら世の中から非難轟轟になってしまうのは組織としてどーよ??? と思うわけですよ。
でしたね。
こういうケースでは、その組織の定款に何かおかしなことが書いていないかチェックしたくなります。
定款というのは、みなさん何か「お飾り」的なものぐらにしか考えていないかも知れませんが、これは組織にとっては結構重要なものなのです。
個人で例えるなら「人生哲学」みたいなもの。
「私は何のためにこんなことをして生きていきます!!」
みたいなことが書いてあるわけです。
普段の細かい仕事の内容については定義していませんが、その存在意義について定義しているわけですね。
ではJASRACの定款はどうかというと、
定款全文はこちら。
https://www.jasrac.or.jp/profile/disclose/pdf/article.pdf
「目的及び事業」という項目があります。 そこには、
第2章 目的及び事業
(目的)
第3条 本会は,音楽の著作物の著作権を保護し,あわせて音楽の著作物の利用
の円滑を図り,もって音楽文化の普及発展に寄与することを目的とする。
これを読み解いていくと、こんな感じかなと思うわけです、
2. 利用の円滑化=合理化を主目的としている
3. 著作物の権利だけを保護し、利用の円滑化を追求していれば音楽文化の普及発展に寄与できると思っている。
あーなるほどなと思いますね。
まず、著作権者は二の次です。平等に配分するというのは目的の端っこにすら書かれていません。 だから、JASRACとしては一所懸命に「平等に配分するように」仕事をするわけではないのかなと。
ここは結構重要でJASRACの設立根拠になっている法律を見てみると、
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、著作権及び著作隣接権を管理する事業を行う者について登録制度を実施し、管理委託契約約款及び使用料規程の届出及び公示を義務付ける等その業務の適正な運営を確保するための措置を講ずることにより、著作権及び著作隣接権の管理を委託する者を保護するとともに、著作物、実演、レコード、放送及び有線放送の利用を円滑にし、もって文化の発展に寄与することを目的とする。
ほら、「著作権及び著作隣接権の管理を委託する者を保護するとともに」わざわざ管理を委託する者を保護するって書いてあるじゃないですか。
上位の法律には書いてあるのに定款には書いていないということはワザとわかっていて外してあるとしか考えられません。
恐らく設立当時のIT技術では両立できなかったと想像しますが。。。
JASRAC定款の二つ目の「利用の円滑化」の部分も、配分の公平性と一見矛盾することですね。JASRACが設立された当時は配分の公平性を担保するとなると利用の円滑化が進まなかったのである意味仕方のないことですが、個人が今どこで何をしているのかというビッグデータをばんばん活用している現代社会において、利用の円滑化と配分の公平性は両立できるものです。もちろん仕組・システムを整備するのには時間がかかりますが。それをいつまでにやりますとも言わないのは、定款に書かれていないからではないかと思うわけです。
そういうおかしな定款に沿って真面目に仕事をしているからおかしなことになっていくわけですね。
では、どうするか、もちろん海保氏の言うように「JASRAC以外の管理団体を盛り上げていこう」はやらねばなりません。 もう一つ、もっと単純にJASRACの定款を変えれば良いのになぁと思うわけです。
たとえば、著作権者への平等な配分という文言を追加すればよいのです。
(目的)
第3条 本会は,音楽の著作物の著作権を保護し,あわせて著作権者への平等な配分及び音楽の著作物の利用の円滑を図り,もって音楽文化の普及発展に寄与することを目的とする。
こうすればJASRACの中の人たちは真面目に仕事をされる方々ばかりなので良い方向に進むのではないかと思います。
めでたしめでたし!! にならないかなぁ。
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海保けんたろう氏は、Frekulというミュージャンのバックヤードを全面サポートするサービスを開発運営されている若手経営者・音楽家なのですが、そのFrekulで、JASRACではない著作権管理団体であるNexToneとの管理委託契約を橋渡ししてくれるのです。
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